2005年8月13日、民主党はマニフェスト案を提示しました。案の段階から提示する姿勢は賛同出来ます。
 が、その案の郵政改革部分は、郵便貯金の限度額1000万円を700万円に引き下げると云うものでした。私は、これだけのものでは賛成する気にはなりません。

 郵便貯金の現在のシステムは、実際は名寄せも充分出来ない、民間金融機関としては欠陥システムです。つまり、実際に何人の人が郵便貯金の口座を持っているのか、私がいくつの口座を同時に持っているか、検証出来ないシステムなのです。このせいで、以前の新聞発表も、同じ名前でソートした結果、という甚だお粗末なものでした。この事によって、実際は1000万円以上の郵便貯金を複数口座で預け入れている事は公然の秘密(秘密でさえあるのか、疑問ですが)です。身近にも、そうした方がいませんか?1000万円を超えていなくとも、家族が、自分の知らないままで、自分の口座を作って貯金をしてくれていると云う麗しい話はよく聞くところです。が、これは現在の金融制度では、身元確認の不十分な事の裏返しです。また、1000万円以上の貯金(利子などで増殖したものです)があるのに、解約や金額の調整をしない者に対して、貯金の超過額分を国債に変えるとの強制処分も、最近やっと悪質と思われる者に対して行われ始めたに過ぎません。こんなシステムの中で限度額の1000万円から700万円への引き下げなどと云うものは、本質的な意味を持ちません。現在の郵便貯金から民間への資金の移動などと言っていますが、尻抜けです。まずは、郵便局のシステムをしっかりとし、その前に、実際の貯金額が1000万円を超過している場合には政府保証も与えない事を言明し、身元の再確認を行い、もし複数口座が見つかった場合は、有無を言わさず国債へ転換し、同時に国税庁へ通知し、引き出しの一時凍結と国税調査を行う事を言明するだけでも、ある程度の効果があると思われるほどです。
 また、郵便局しか近くに金融機関が無いと云う方もいるのは事実です。700万円~1000万円の方は、遠くに預けるべきなのですか?本来は、1000万円超の口座もそうすべきでしょうが、金融機関が近くにないお陰で、こうした家族間での名義の貸し借りも行われていたのです。あるべきは、きっちりとした郵政の名寄せを行える状態にした上で、近くに金融機関がない方には郵便ネットワークに預けられる様にすべきではないでしょうか?これも私が郵政民営化を支持する理由です。本当に守るべきは郵政ネットワークですが、これが郵便局でなければならない理由もないと考えています。コンビニがその代替をしても構わないのです。その為の支出なら税金から行っても構いはしない、と考えます。

 この中途半端なマニフェスト案には、私は到底賛成出来ません。

 岡田代表は、直ぐそこに見えた政権の為に、組織防衛を政策の検討より優先した、としか思えません。
 これでは、私は、自民党に郵政改革をまかせて、民営化の道筋を付けた後で、民主党に細かな枝葉を整えて貰おう、と考えるしかないのです。直ぐそこに見えた政権は蜃気楼となり、岡田氏は代表を辞任する事になるのかも知れません。次期党首が不安です。小沢氏では、今までの勢いは持続出来るか、、どうか、怪しいものです。民主党は分裂するかも知れません。
 民主党は、前回の年金選挙のときに、間近の小さな改革は否定しました。しかし、大きな方向を示す事で勝利したのです。今回は、大きな方向を示す事は出来ておらず、目の前に小さな改革を提示しただけです。現在の民主党の衆議院議員には、労組系の議員は殆どいません(参議院には官公労を背景にした議員もいますが)。それでも、組織全体を守る事を優先した岡田氏を、私は支持出来ません。民主党は、このままでは、今回は負けても仕方ないと考えます。次の参院選挙までの2年間、自民党に政権をまかせたいと思います。その間に、小泉首相の思うところの改革を進めて頂きたいと思います(総裁の任期は来年までであり、後継者については変な人がまたぞろ出て来ないか、不安ですが)。
 2005年は、バブルの破綻からおよそ15年(数え方によっては、それより短い)を迎えようとしている時期です。同じ期間のうちに改革を大急ぎで進めなければならないと考えます。のんびりと待っている余裕はないのです。現在の郵政民営化法案は確かに二流品ですが、民主党にまかせて、更にいいものが実現するのか、甚だ不安です。このままでは、私は、小選挙区自民、比例区自民で投票する事になるでしょう。
 民主党結党以来、ずっと民主党に投票してきた私でも、そう考えるのです。

参考①:日本経済新聞2005年8月11日付朝刊第1面(一部抜粋)…実は民主党内は郵政民営化賛成派が少なくない。手を打たなければ賛否が分かれ、ハチの巣をつついたようになる。そう懸念した岡田克也代表は議論を避け、対決法案では必ず示してきた対案の提出を押しとどめた。逆造反なしに採決を乗り切った岡田氏は「出していたらこうはならなかった」と漏らした。

参考②:朝日新聞2005年8月14日付朝刊第2面(一部抜粋)…12日午後1時、衆院第1議員会館、岡田代表ら幹部が集まった。マニフェスト(政権公約)の詰めを行う場だったが、仙谷由人政調会長は声を張り上げた。「郵政を主張しなければ討ち死にだ。みんな国会に帰って来られなくなる」。岡田氏は「そんなことを言う場ではない」とかわしたが、党幹部たちの悲鳴は痛いほどわかっていた。
 反対派をたたき、総選挙を「小泉郵政改革」の一色に染め上げようとする自民党。民主党は郵政民営化を争点から外して身をかわそうとしたが、現場からは「それでは勝てない」と怒りの声がわき上がっていた。
 「毎日、郵政民営化に対する考え方を説明しろ、と支持者から迫られている」。立候補予定者からSOSの声が執行部に寄せられていた。
 若手の一人は支持者から来たメールの文面に暗然とした。「今回は小泉でやる。案もない民主党はやれない」
 仙谷氏を中心に突貫工事で民主党の対案づくりが続いた。中身がまとまり、仙谷氏の名前の文書を、全国の立候補予定者の事務所にファクスで送り始めたとき、日付は13日に変わっていた。
 文面は、このように書かれている。
 「民主党の郵政改革を強く訴えていただきたい」
 「民主党の郵政改革の方針は『徹底縮小論』。小泉氏の郵政民営化論はまやかしであり、絶対に反対である---と自信を持って言い切ってください」

参考③:亀井静香氏のかつての発言…「小泉はダメだ。自民党の名前で民主党の政策をやっている」

参考④:日本経済新聞2005年8月13日付朝刊第1面(一部抜粋)…郵政解散から一夜明けた九日。民主党は党内で取り組んできた年金改革案の肉付け作業を一時棚上げすることにした。
 「年金一元化」。昨年七月の参院選での民主躍進はこの旗印に負うところが大きかった。神通力は一年余りたった今も残っているだろうか。民主案は低収入層などへの年金財源の一部に消費税を充てると明記してある。この考え方について説明責任を果たそうとすれば、税率の上げ幅なども洗いざらい明らかにせざるを得ない。
 党内作業の中断の背景には、税負担を前面に出すことが選挙戦に有利に働くとは限らないとの判断があったと思われる。

参考④への私のコメント:中断が、いつまでなのか?選挙が目前にあるから、目前の課題に対処する為の一時的なものなのか?そうでないのか?が明らかにされておらず、判断の付けようがない。