郵政事業は民営化すれば、それでOKなのでしょうか?今の郵政事業のうち、守るべき価値は無いのでしょうか?
 これを無いと言い切る政党は、ありません。が、そのうち、何を守るか?については若干の差異がある様です。そして、その価値を守る為手段となると、政党によって、参院で否決された郵政民営化法案から、民営化してはならないと云う意見まで、様々です。
 しかし、何の価値を守るのか?の共通理解から始めずには、議論は噛み合う筈もありません。
 私は、守るべき価値を次の様に考えます。以下の文は、他人に納得して貰う為のものとしては、かなり荒削りだとは感じています。が、9・11を迎える前に自分の言葉で考える為には、一度言葉にしてみる事が必要と考え、取り敢えず書きます。順次、表現や論理を鍛えて、書き直して行きます。

【現行の郵政事業のうち、守るべき価値】

① 口座維持手数料不要(利子がその分低くても構わない)の決済口座へのアクセス
② 資金口座へのアクセス
③ 全国一律料金での物流へのアクセス(葉書は期間限定で構わない)
④ どんな職業でも加入出来る保険へのアクセス
⑤ 万国郵便条約への対応
⑥ 訴訟法上の送付、送達

順番に説明して行きます。

① 口座維持手数料不要(利子がその分低くても構わない)の決済口座へのアクセス

 日本では、銀行口座、郵便貯金口座が決済手段として他の先進国と較べて高度に発達しています。日本ほど広く多くの人に、また多くの事項が銀行引き落としで決済されている国は少ない筈です。また、振り込み(郵便では振替でしょうか?)も大事な決済方法です。例えば、米国では、日本の銀行口座、郵貯口座の役割を小切手(銀行の当座預金を持った上での小切手振り出し)が現実に担っています。
 こうした口座を維持手数料不要で維持出来る事、また、それにアクセスするに当たって現在より不便にならない事は、守るべき価値の第一と考えます。
 まずは、維持手数料の有無。現在は、ほとんどの銀行口座は維持手数料を取っていません。ですが、将来とも、誰であってもそうした口座を持ち続けられる事。維持手数料がかかる故に、口座を持つ余裕のない者が出て来る、と云った事態が生じてはなりません。
 そして、そうした口座へのアクセスで、現状以上の地域差が生じない事。つまり、どこに住んでいても、ATMなどでお金が引き出せ、振り込みを行う、と云った事が出来る事。振り込み指示はインターネットでも可能でしょうが、インターネットへのアクセスに個人差が存在している現在では、せめてATMがある事。それが必要だと考えます。
これは、元本保証のある決済口座ですので、利率の上で、民間の銀行口座より低くても、許容範囲内と思います。銀行にも、預金保険で守られる訳ではない、決済口座と云うものがあるのですから。

② 資金口座へのアクセス

 どこに住んでいても、資金運用に当たって、利率などで不利にならない口座に対するアクセスが現状より不利にならない事。これは、ATMまたはインターネットで指示が出来ればよいのであって、郵便局の口座である必要はないと考えています。
 場合によっては、郵便ネットワークから民間銀行の口座に指示を出せる形でも構いません。銀行側で郵貯ATM網との接続を拒否するのは自由ですが、接続を望む銀行に対しては、郵貯ATM網は開かれていなければなりません。

③ 全国一律料金での物流へのアクセス(葉書は期間限定で構わない)

 簡単に言えば、郵便切手などの物流手数料の支払いで購入で現状より不便にならず、これを出すのに現行のポスト、郵便局網より不便にならず、その配達に関して現在の配達より不便にならない事です。
 その担い手が郵便局でなくとも構いはしないと思います。簡単に言えば、窓口はコンビニでも、市役所(民間云々からはズレルのかも知れませんが、市役所などが受託しても構わないのではないでしょうか)でも構いませんし、配達主体に関して言えば、他の業者、例えば、ヤマト運輸であったとしても構わないと考えます。必要なのは、その機能が、どこからではあれ、提供されている事、です。
 また、葉書は、現状では、手紙と物流コストは変わらないのに、手紙から補助金を貰う形で安くなっています。葉書と手紙の料金差を維持する事まで、守らなければならない価値とは思いません。が、葉書も公共料金の一部ですから、もし一緒の料金にする、または、差を小さくしようとするのならば、激変緩和措置は必要だと思います。

④ どんな職業でも加入出来る保険へのアクセス

 保険には、簡易保険でしか加入出来ない職種がある、また、加入出来たとしてもその他の職業より保険料が非常に高い職種がある、と聞きます。職業の危険度の差異はあるでしょうが、加入するかどうかに悩む様なものであってはなりません。民間で出来なければ、それを何らかの形で提供する事も必要でしょう。が、その為に、全員が加入できる保険が必要なのか、そうした困難のある職業の方が入れる保険があれば足りるのか(危険度の高い方のみを対象として、そうでない方と同じ保険料で、と云うならば、民間では無理です)?は、また別の事です。

⑤ 万国郵便条約への対応

 万国郵便条約から脱退すると云う道もあるのでしょうが、敢えて、そうしなければならない必要があるとも思えませんし、万国郵便条約に郵便局が加入している事で国民は大きな利益を得ているのですから、万国郵便条約を日本国内で担う主体がどこかに存在している事は必要と考えますし、これは守るべき価値の一つと考えます。

⑥ 訴訟法上の送達

 別に市役所などからの通知は、現在でもヤマトなどのメール便で構わないと思います。しかし、訴訟法上の送達に関しては、厳格な手続きが決められていますし、送達自体に法律的な効果が付与されています。これについては、参院で否決された郵政民営化法案では、郵便認証士(司だったかな?)と云う資格を設けるとしています。私は、別に郵便局でなくとも、規格を認証出来た機関(会社やシステム)であれば、送達の機能を与えればよいと思います。その認証をどこが行うのか?は更に議論が必要ですが。

以上が、現行の郵政事業に存在していて、将来も守るべきと私の考える、価値です。