かつて、このブログ内でも「参院選は、民主党に投票します。」(http://blogs.yahoo.co.jp/ubiquitous_budda/8898615.html)で、少々書きました。今回のものは、それに改革案の荒削りなものを付け加えたものです。

 今回、郵政民営化法案は、衆院で可決、参院で否決、となりました。参院で否決されたのは、参院議員は解散もなく、自らの意思を表明し易かったとの面もありますが、身分が保障されているだけに安心して倒閣運動に参加出来た、と云う面もあります。
 もとより、制度は大枠を決定しますが、その実際の動き方は情勢によって異なります。現在の参院は、両院の与野党伯仲と相俟って、かなり大きな権限を手中にするに至っています。自民党が今回の衆院選でたとえ単独過半数を維持しようと、公明党と連立しなければやっていけないのも、参院の情勢にも関係があります。

 しかし、参院には、大きな問題点が横たわっていると考えます。世界の憲法上、第二院については、よく「第一院と同じ議決をするのであれば不要だし、違う議決をすれば有害」と言われます。参院議員は、自らをよく「良識の府」と言いますが、それを担保する制度は、どこにもありません。強いて挙げれば、
被選挙権が衆院議員(満25歳以上)に較べて5歳上(満30歳以上)となっているに過ぎません(これを定めるのは、憲法ではなく、憲法44条の「法律で定める」との委任に基づき、公職選挙法10条です)。

 私の考える参院の問題点は次の様なところです。

①最大の問題点…1票の格差
 参議院は、二院ある事の性質を活かす為、衆院とは違う考えで運用すべきと言われて来ましたし、かつての最高裁判決でもそれは指摘されています。しかし、参院は、
A) 各県を1選挙区として独立させる(2県をまとめて1選挙区とはしない)
B) 各県には改選時必ず1人の投票を認める
C) 大きな定員増を招かない(財政難ですので)
と言う原則の下で、有権者数で最大と最小を比較した場合、3倍程度の格差が存在します。大きな力を持つに至った参院で、その代表の選出には大きな問題があるのです。現在の検討案では、②の原則を撤廃して6年に一度の投票のみある選挙区を作ろうとの案まで出ている様です。私は、この案は、投票の機会を奪われる有権者が出る事から、憲法違反であると考えます。2県をまとめて1選挙区とすればよいと考えるのですが、解散もなく、自己改革能力をかなり落とした参院では、いつも小手先の修正をし、最近では、その都度、最高裁判決で違憲だが、選挙は無効としない、と云う形の判決を貰っています。一部修正→ 違憲判決 → 一部修正 → 違憲判決、の繰り返しです(この様な議院が「良識の府」であろう筈がありません)。私は、イイカゲン選挙を無効とし、全国1区の比例代表選挙での選挙を命じるべき時と思います。但し、それまでに成立した議決は無効としないと云う事で。勿論、衆院選挙も、適用する原則は同じであるべきです。こうした場合、無効とされた議員には解散と同じ効果となります。問題は、全議員を無効としない限り、判決の時期によっては、半数毎の改選が3年毎にならない可能性が出て来る事でしょうか。この為には、最高裁判決で、今回の選挙の任期を予定されていた次期選挙まで、とすればよいと思います。

②強すぎる身分保障
 制度的には、参院議員の任期は6年であり、衆院議員の4年より、1.5倍長くなっています(憲法46条)。更に、参院には解散がありません。身分としては、かなり安定したものとなっています。参院は「良識の府」と言われていますが、制度としては、被選挙権が衆院議員(満25歳以上)に較べて5歳上(満30歳以上)となっているに過ぎません(これを定めるのは、憲法ではなく、憲法44条の「法律で定める」との委任に基づき、公職選挙法10条)。ちなみに、選挙権は、どちらも満20歳以上です(これも憲法ではなく、憲法44条の委任に基づき、公職選挙法9条)。これだけの事で、参院議員に衆院議員の1.5倍の任期を与える必要はあるのでしょうか?「良識の府」である事は、被選挙権の年齢で担保されるのでしょうか?また、安定装置として一方に、これだけ偏った身分保障を与える必要はあるのでしょうか?私は、そうは思いません。
 まず、被選挙権での年齢は、大きな意味を持たない事は明らかと思います。現実に25歳未満の衆院議員など、歴史を見ても、ほとんどいない(もしかしたら皆無?)なのですから。
 次に、安定装置として、強い身分保障を与える必要はあるか?これも、意味のない議論です。参院が、安定装置にも不安定を醸し出す装置にもなる事は今回の件でも明らかだと感じます。また、衆院の今回の選挙でも、参院の動きを予想しながら投票しなければならないと云う、複雑な要素を付け加えています。

 憲法は、激変緩和の装置を参院に担わせた様で、任期が長いのと同時に、半数ずつの改選(3年毎の改選)を定めています。激変緩和と同時に、衆院と違い、解散がないので、3年毎の選挙を義務付けたものと読めます。私は、半数毎の改選は構わないものの、上に述べた事から、任期を4年とし、半数毎の改選を2年毎に行うべきと考えます。

 ここまで、参院の問題点を書きました。では、どうすれば、よいのでしょうか?
 私見では、
C)憲法改正で、参院を廃止する(かつて自民党が一度まとめた憲法改正案では、こうなっていました)

D)D)が実現出来ないのであれば、参院を衆院と異なった特徴を持つ院、なるべくなら「良識の府」となる様、次の様な選挙制度とする事を提案します。公職選挙法だけの改正で可能ですので、直ぐにも可能な方策です。
 原則、全国1区の比例代表制とする。候補者は、一人毎、順位を付ける。ここで、1票の格差は解消されます。
 その上で、予め委員会を定めて立候補する事を認め、上記の比例代表選挙と同時に、平行して1人だけ投票出来るものとする。委員会毎に投票するのでなく、有権者は自分の最優先と考える委員会の一人の候補にだけ投票出来るものとします(以降、こちらを専門区と呼びます)。委員会の定数を上限として、上記の比例代表選挙の結果と見比べ、比例区政党獲得投票数/順位と、この専門区の投票数が同じになるまで当選とします(専門的には、比例区の議席配分の仕方について、もっといいものがあるかも知れません)。なお、重複立候補は認める事とします(衆院の小選挙区が専門区に相当し、この比例区は衆院の比例区と同じ様な位置づけになります)。こうすれば、専門区で有権者の反映させたい意見を持つ専門家が議席を得る事が出来ると思います。場合によっては、ある委員会は専門区だけで占められるかも知れません。が、それは、有権者の選択として認めてもいいのではないでしょうか?
 この制度の問題点は、次の様な事です。
イ)専門区での厳密な票割りによって、特定政党が、実際の得票数以上の勢力を得る事がある。
ロ)専門区での厳密な票割りによって、実際は専門家でもない者が紛れ込む事があり得る。
ハ)専門区が特定政党の推す者だけに占められかねない。
二)かつての参院全国区と同じで、充分に候補者の意見が知られないままで投票する事になり、結局は人気投票と変わらなくなる。
ホ)専門区の候補者が専門外で偏った意見を持っている事もあり、参院の全会での投票が偏って来る可能性がある。
へ)特定地域や特定団体の利益代表が紛れ込む可能性あり。
ト)かつての参院全国区と同じく、現実の選挙費用が膨大なものにならないか?
チ)委員会の定数を変更するのに機動性がなくなり、現実への対応が遅れがちになる可能性がある。

 ロについては、全く専門外の者が出て来る様な事になれば、その政党の分別が疑われるだけでしょう。継続性はない筈です。
 イ、ニ、へも、可能性はあります。が、完全な全国1区での比例代表制で無い限りは、こうした事は可能性のある事です。もしかしたら、北海道・沖縄委員会なんてのが出来たら、鈴木宗男さんは当選確実かも知れません。
 トについては、インターネットの利用を解禁(一部解禁で構いません)する事で対応出来ると思います。また、公職選挙法の適用を厳しくするのは、当然です。
 ハですが、これが一番怖い事です。委員会が特定の意見だけで占められたら、その関連の法案は特定の意見のものしか通らず、それが全会での多数の意見と異なる場合、その関連の法案が全く可決されない事になりかねません。これを防ぐには、専門区から入れる委員会毎の議席の上限を委員会の議席の半分にする、などの制限が必要かも知れません。また、
i) 専門区での委員会先議で行った法案の全会投票では、委員会の委員は、参加出来ない事にする。また、全会の議席(専門区)の2/3を超える賛成を得て、委員会での審議無し、もしくは、での全会の審議を行える様にする。
ii) 専門区選出の委員は、全会投票に参加出来ない様にする。この場合は、バランスから言って、委員会先議を義務付ける必要がありますし、専門区以外の委員(専門区の議席の上限を委員会毎の定数の半数とする事でも対応可能です)に最低議席数を定める必要があります。
 ホも、ハのところで書いたi)である程度防げますし、ii)であれば完全に防げます。
 チについては、委員会の定数や新設、増設、廃止は、比例区の委員だけが出来るものとする(法定である事が必要です)事で対応可能と考えます。この場合も、比例区の最低議席数の定めが必要です。

 まだ、この私案は、荒削りですので、まだまだ検討が必要であると思います(メンドクサって意見もあるかと思いますが、検討案だからであり、原則は単純です)。しかし、現在のままでいい訳がありません。

参考A:日本経済新聞2005年8月31日付朝刊第1面の「改革は進むか~05衆院選 2」で、議院内閣制、参院、党首の任期についての、もっと深い考察が載っています。第3面にも、衆院選挙後の考えられるシナリオについての考察があります。全部を引用する事は出来ないので、図書館などで閲覧する事をお奨めします。
参考B:日本経済新聞2005年9月4日付朝刊第28面、土谷英夫・論説副主幹の「中外時評」から、一部抜粋。
 参議院の現状は、いったい何を代表しているのか。その正当性には巨大な疑問符がつく。
 昨年1月、最高裁大法廷は、選挙区で「1票の格差」が5.06倍に広がった2001年7月の参院選を一応合憲としたが、15裁判官中、6人が違憲、4人が次回選挙もこのままなら違憲の疑い濃厚とした。
 保守的な最高裁にすれば、違憲判断に限りなく近い。04年7月の前回参院選では、1票の格差はさらに拡大、5.13倍にも達している(ちなみに今回衆院選は2.18倍)。
 人口分布の変化で、参院選挙区の ①都道府県代表 ②半数改選 ③人口比例 の三要素がもはや並立不能になっているのだ。
 参院の役割を変える憲法改正も、参院で2/3の賛成を必要とするという難題を抱えているのは確かだ。しかし、二院制のあり方を根本から見直すという意味で「参院をぶっ壊す」論議は、避けて通れない。
参考C:日本経済新聞2005年9月12日付朝刊第2面「社説」から一部抜粋。
 仮に衆院が変わったとしても参院は依然として「良識の府」とはほど遠い「族議員の府」であり、抵抗勢力の巣窟のようなありさまである。